宮城県石巻市には、在宅医療に携わる約9割の機関が加入する情報共有ネットワークがある。ネットワークの中には介護事業者も含まれ、医療との連携をICTを活用することで深めている。武藤真祐医師は石巻で在宅医療に取り組みながら、このネットワークのシステム開発からコーディネートまでを手がけてきた。介護現場のICT活用におけるリテラシーの向上に注力してきた氏に、介護職にとっての課題とICT導入の可能性について聞いた。
医療法人社団鉄祐会
武藤真祐 理事長
2011年の9月、被災地支援のために宮城県石巻市でクリニックを開業し、在宅医療の普及に力を注ぐようになりました。そこでICTを使った情報共有の必要性を感じ、2012年から総務省の予算を得て、富士通株式会社(神奈川県川崎市)と共同でシステムを開発しました。多職種間における情報共有において、使われ続けるシステムをつくりたい、将来的に予想される地方都市での在宅医療、看護、介護などの資源を補うために、1つのモデルを示したい、という目標がありました。
立ち上げの際は、当クリニックとつき合いのある訪問看護ステーション、ケアマネジャー、訪問介護事業所、薬局、デイサービスなどを合わせると、加入機関は10程度でしたが、現在では急性期の病院、慢性期の病院、そして在宅医療を提供する3つのクリニックを含めて77機関が加入しており、石巻で在宅にかかわる医療・介護機関全体の約9割に達しています。
現在の状況に至るまでに6年半がかかったわけですが、スマートフォンなどを使ったことのない人がほとんどでしたので、最初の一年間は自分たちの組織のなかにヘルプデスク(専任のサポートスタッフ2人が対応)を置き、スマートフォンやタブレットの操作に慣れてもらうことから始めました。2年目に試験運用を行ないましたが、スマホで入力するのは大変だという人が多かったので、音声入力、スマートフォンで撮影した介護記録などの画像やFAXなどをこちらでテキストに起こす方法を1年間試し、関係者にICTを使うメリットを理解してもらえるよう努めました。
もう一つ課題となったのは、介護職が「何を医療職に伝えればよいのか?」ということです。これについてはシステム開発の段階からワーキンググループをつくり、デイサービスの事業主やケアマネ、現場のヘルパーにも参加してもらって、自分たちにとって使いやすいシステムとは何かを議論をしてきました。