ワーキンググループをつくってよかった点は、医師が介護の視点を持つようになったことです。在宅の医師を除いて、通常医師は、介護の教育を受けていません。介護職の中には、利用者の介護記録を情緒豊かに長々と書く人もいて、医師はそれをきちんと読んでいる暇がなかったりします。どういう情報共有が必要なのか議論した結果、それぞれの視点をある程度共有しようという意識が醸成されたことは大きな成果です。
さらにネットワークのなかで、情報を閲覧できるだけでなく、介護職などが医師にわからないことを質問できるようにもしました。医師はあとで答えることができるので、コミュニケーションも以前より取りやすくなったと思います。医師も人に見られるという意識をもつことで、医療職以外の人が見てもある程度わかるようなカルテを書くように変化しました。
次の段階としては協議会をつくって、主体となる訪問看護や、介護事業者、オブザーバーとしては三師会(医師会・薬剤師会・歯科医師会)、そして県の保健所、市の保健局などに入ってもらい、透明性が高くて公的なものをつくりあげていきました。
当初は、運営母体を僕らが運営していたのですが、現在は医師会が行なっています。これが実現したのも、行政と医師会がサポートしてくれたことが大きかったと思います。
石巻ではこのシステムが実用化されたので、情報連携を行なうというフェーズはもう終わっています次の課題は、介護で言うならば「見える化」と「効率化」です。ここから先は、いかに少ないお金で医療・介護を回していくかです。国のほうでも少しずつ方向性が見えてきてはいますが、現場にどこまでICTを導入できるかが重要な課題です。
また、社会全体で考えたときには、医療・介護ともにプロフェッショナルを突き詰めることが、純粋な意味で生産性を高めることに繋がるでしょう。医師、看護職、介護職が専門性を発揮した後に、満たされない部分をAIやロボットで補うことが効率化に結びつくのではないかと思います。人でないと担えない専門性が高められる仕組みをICTや、いろいろなテクノロジーが可能にしてくれる。上手に使えば、介護の生産性も結果的に上がっていくでしょう。